福島県双葉郡広野町にある高野病院は、震災と原発事故という未曽有の危機に直面しながら、地域医療を守り抜いてきました。その歴史ある病院の新たなリーダーとして2023年に経営を引き継いだのが、循環器内科と救急医療の専門家である理事長・小澤典行（おざわ のりゆき）氏です。
循環器内科と救急医療のスペシャリストとしての実績を持ち、さらに病院経営改革にも深い知見を有する小澤氏。地域医療の維持と発展を使命と掲げ、これからどのような未来を描いていくのか。本記事では、その人物像と高野病院の役割、そして今後の地域医療への展望をわかりやすく解説します。
Contents
小澤典行とは誰か
経歴とプロフィール
小澤典行氏は、富山医科薬科大学（現・富山大学医学部）を卒業後、循環器内科と救急医療の現場で長年にわたり実績を重ねてきた医師です。日本循環器学会専門医、日本内科学会専門医といった高度な資格を取得し、特に血管内治療（心臓カテーテルや動脈硬化治療）を得意としています。それに加え、経営改革の視点も併せ持つ稀有な存在です。
実際に、病院経営改革にも取り組み、医療機関の効率化や持続的発展に大きく寄与してきました。2023年11月には高野己保前理事長から高野病院の理事長を引き継ぎました。
その決断の背景には、震災後も懸命に地域医療を守り続けたスタッフや住民への強い敬意がありました。小澤氏は「地域住民が安心して医療を受けられる体制を築くことが使命」と語り、その言葉通り、日々現場に寄り添い続けています。
高野病院との関わり
小澤典行氏が高野病院を承継するに至った理由は、単なる経営上の判断ではありません。2011年3月11日の震災と原発事故に直面しながらも、避難せずに医療を提供し続けた高野病院の姿勢に心を打たれたからです。当時、多くの医療機関が閉鎖を余儀なくされる中で、同院は孤軍奮闘しながら地域住民を支えました。
小澤氏が目指しているのは、高野病院が持つ「震災後も治療を諦めない」という精神を未来につなぐことです。理事長就任後、医療水準の向上やスタッフが安心して働ける環境づくりに尽力し、広野町における医療の柱をさらに強化する、新時代の医療経営に取り組んでいます。この姿勢は、単なる医師ではなく、地域医療のリーダーとしての強い決意を物語っています。
高野病院の歴史と地域医療への役割
東日本大震災と原発事故後の状況
1980年に創設された高野病院は、40年以上にわたり地域の医療を支えてきました。しかし、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故により、全町避難を余儀なくされる広野町で、唯一地域医療を維持する役割を担う厳しい状況に直面しました。
医療従事者自身も被災者でありながら、使命感を胸に診療を続けた姿は、地域にとって大きな希望でした。震災後もなお復興途上にある地域で、安定した医療体制を維持することは容易ではありませんが、その努力があったからこそ、住民は「戻れる町」としての未来を描くことができました。
地域で唯一診療を続けた背景
震災直後、多くの病院が閉鎖や機能停止を余儀なくされる中、高野病院は避難せず診療を継続しました。その背景には「地域に必要とされる病院である」という信念と、職員一人ひとりの使命感がありました。
被災地の避難所を巡回する形で医療を届け、物資不足の中でも患者一人ひとりの命を守り続けた過酷な日々。この活動は、医療の使命を示すと同時に、地域社会の絆を再び強固なものとした象徴的な出来事です。こうした実績は、単なる医療提供を超えて「住民の安心と希望を守る砦」としての役割を示しました。この歴史を受け継ぐ小澤典行氏は、過去の教訓を未来につなげるべく、より強固な医療体制の構築を進めています。
医療法人社団養高会と徳洲会グループとの関係
法人の概要と医療ネットワーク
高野病院は、医療法人社団養高会が運営する基幹病院として地域に根ざしています。養高会は1980年の設立以来、療養病棟や認知症治療病棟を整備し、幅広い診療体制を整えてきました。
さらに2023年12月には長田内科循環器科医院と合併し、医療ネットワークの強化を実現しました。地域における急性期から慢性期、そして在宅医療まで一貫してサポートできる体制は、住民にとって大きな安心材料となっています。
他病院経営との比較
全国的な大病院やグループ病院と比べると、高野病院は規模こそ大きくはありません。しかし、その分「地域密着」「顔の見える医療」という点で独自の存在感を持っています。例えば徳洲会グループが全国展開を通じて医療格差の是正に取り組むのに対し、高野病院は震災後の特殊な地域状況を背景に「地域に残り続ける病院」としての使命を果たしてきました。
大規模病院では実現しづらい柔軟性や迅速な意思決定が可能であり、これが地域住民にとってかけがえのない安心感につながっています。小澤典行氏のリーダーシップにより、この特徴はさらに強化されつつあります。
今後の展望と地域医療の課題
高野病院が目指す未来
小澤典行氏が理事長として掲げるのは、「医療の質の向上と規模の発展」です。高野病院では、循環器内科や認知症治療をさらに進化させるとともに、訪問診療やリハビリに特化した地域包括ケア体制を拡充する予定です。また、スタッフが安心して働ける環境改善やキャリア支援に力を入れ、誇りを持って働ける病院を目指しています。
また、職員が誇りを持てる職場づくりを推進し、働きやすい環境を整えることも重点課題としています。
これは、優れた人材を確保し、持続可能な医療提供を実現するために不可欠な取り組みです。小澤氏の専門性と経営手腕を背景に、高野病院は「治療だけでなく地域生活全体を支える医療拠点」へと進化していくことが期待されています。
地域住民への影響
病院の発展は、そのまま地域住民の安心に直結します。高齢化が進む広野町では、健康寿命の延伸が重要課題となっています。病気に対する治療だけではなく、“住み慣れた地域で暮らしつづける”という住民の思いに寄り添い、人生の最期まで支える地域医療を実現しています。訪問診療や訪問看護の充実は、住民が自宅で安心して生活を続けられる大きな支えとなります。
また、災害時にも拠点として機能することで、住民にとっての「命の砦」としての役割を果たし続けます。小澤典行氏のリーダーシップのもと、住民の暮らしに寄り添った医療が継続されることは、この地域の未来にとって非常に大きな意味を持っています。
まとめ
循環器内科と救急医療のエキスパートである小澤典行氏は、病院経営のプロフェッショナルでもあります。震災と原発事故を乗り越え、地域医療を守り続けた高野病院の意志を受け継ぎ、未来を切り拓く挑戦に向き合っています。
その歩みは、地域住民の安心と希望に直結するものであり、まさに「地域に生きる医療」の象徴といえるでしょう。今後も小澤氏のリーダーシップが、高野病院と地域医療の未来を切り拓いていくことは間違いありません。
