近年、野木亜紀子脚本のドラマが話題を集めています。今放送中の『獣になれない私たち』の脚本家の方ですね。
例えば、「逃げ恥ブーム」を作り上げたTBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』やマンガ業界を取り扱ったお仕事ドラマ『重版出来!』、さらに10月25日に行われた東京ドラマアウォード2018で作品賞・主演女優賞・脚本賞・演出賞・特別賞・主題歌賞の6冠で最多受賞となった『アンナチュラル』などを手掛けました。
個人的に『アンナチュラル』は伏線の回収が見事で、とても面白かったです。ネット上でも続編の『アンナチュラル2』の制作を望む声が多いのも納得です。
そんな今大人気の野木亜紀子氏が初めてNHKのドラマを書いたことで話題になっています。作品名は『フェイクニュース』です。『フェイクニュース』は、前・後編の短いドラマではありましたが、今のネット時代の根深いテーマを取り上げており、とても内容の濃い注目すべき作品だと言えます。
ネット上に溢れるフェイクニュースに対して、どう対処すべきか。書かれた当事者(企業)、見た人(ネットユーザーたち)それぞれの視点で考えさせられる作品です。
今回はそんなドラマ『フェイクニュース』から学ぶ、現代のフェイクニュースの恐ろしさについてご紹介していきましょう。
Contents
ドラマの概要
まずは『フェイクニュース』というドラマがどのような内容だったのか、少しだけご紹介していきます。『フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話』は、NHKで2018年10月20日と27日に全2話(前・後編)で放送されたドラマです。
主人公の女性・東雲樹(北川景子)は、大手新聞社からネットメディアを運営する会社へと出向することになりました。大手新聞社から出向となったため、これまでは1つのネタに対し丁寧に時間をかけ裏を取り調査してきたやり方が、ネットメディアでは「PVが取れない」「経費がかかる」と一蹴されてしまいます。
同じメディアであるにも関わらずやり方の違いに違和感を覚える樹ですが、そんな彼女がSNSの青虫混入の投稿に関する取材を行っていく中で、フェイクニュース騒動に巻き込まれていってしまいます。
フェイクニュースの真相を追い求める社会派ドラマです。主演は北川景子が務め、他にも光石研・杉本哲太などのバイプレイヤーや、永山絢斗や金子大地、矢本悠馬などの若手俳優達も揃った豪華なキャストです。
日本でのフェイクニュース事例
ドラマでも取り上げられているフェイクニュースですが、中には「あまりそういったものは見たことがない」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは自分自身が思っているだけで、真実を伝えているニュースだと思っていたものが、実はフェイクニュースだったということもあります。
また、ネット上のニュースにはそもそも嘘が多いです。確実な情報源や取材をした上で書いていないニュース記事も多くあります。タレントがテレビで発言した内容を切り取って、ネットニュースにしたりします。きちんと取材もせず何と楽な仕事なのかとよく批判されていますね。
「ネット上にはたくさんの嘘が存在する」――、これは周知の事実です。ですので、ネットニュースは「どこまで事実なのか」という点が曖昧になっているものが多いため、フェイクニュース問題と言われても深刻に捉えられない人も多いのではないでしょうか?
例えば、記憶に新しい出来事として、大手IT企業のDeNAが運営していた医療情報サイト「WELQ」が真偽の付かないような情報や、実際には不適切な行為を効果があるように紹介したとして、事実上閉鎖に追い込まれています。
WELQではライターに外注してリライト記事を作成し、それを医師監修に置き換えるという方法がとられていました。医師監修というと医師が書いたように感じられるため記事に対する信頼性が高まります。
しかし、実際に医師を雇って記事を書いてもらうのは効率も悪くなってしまうため、文章自体はライターが書き、後から医師監修という言葉を添える形を取ったのだと考えられます。このフェイクニュースの怖いところは、健康や命にも関わってしまうという点です。しっかりと裏も取らないまま作られた文章に、「医師監修」という言葉が付いてしまえば、多くの方が実践してみようと考えます。その人の健康状態によっては命の危機に晒されてしまう可能性もあるのです。
他にも、地震などの災害が発生した際に、混乱に生じて偽の情報を拡散させようとする人がいます。2016年熊本地震が発生した際にも、Twitterのある情報で大変な混乱を招きました。その情報には、地震で近くの動物園からライオンが脱走しているというコメントと、道路にライオンが佇んでいる写真が掲載されています。
この情報は一気に拡散されましたが、結局偽物の情報だということが後から分かったのです。ライオンが脱走したという偽情報が流されてしまったことで、熊本県内にある動物園は問い合わせ電話の対応に追われました。結果的に偽の情報を流した発信者は、動物園の業務を妨害したとして偽計業務妨害の容疑で逮捕されることになります。
このように、フェイクニュースで相手に損害を与えた場合、偽計業務妨害罪で逮捕され、罰金または懲役刑が課せられます。偽情報を流した犯人は何を思ってその情報を流したのかは分かりませんが、軽い気持ちだったとしてもれっきとした犯罪になってしまう可能性もあるのです。
フェイクニュースのもう一つの問題点「どれがフェイクニュースなのか見破れずに拡散する浅はかさ」
フェイクニュースには、「一瞬でこれは嘘だと分かるもの」もあれば、「本当かどうか分からないようなもの」もあります。前者であれば炎上することも少ないのですが、後者は厄介です。
本当か分からない情報を多くの方が信じてしまうことで問題視されているのです。フェイクニュースのもう一つの問題点は、我々ネットユーザーたちに真偽を見分ける力が備わっていないということが挙げられます。
インターネットが普及し始めたのは1995年、Windows95の発売をきっかけに、これまでは企業などでしか使われていなかったパソコンが家で使われるようになり、それに伴ってネット環境も広がっていきました。そのため、30代後半から40代前半の世代はネット環境が広がり始めた頃から仕事や家でパソコンを使うようになっていきます。
また、20代後半から30代前半の世代は、学校にパソコンが導入されるようになり、パソコンを学ぶ授業が行われることになりました。そのため現在20代後半から40代前半にかけての世代は、比較的ネットリテラシーが高い人も多く、フェイクニュースなどを見分ける力がある人も多いという特徴を持っています。
しかし、徐々にパソコンからスマートフォンへとツールが移行していき、ネットがさらに身近な存在になったことで、真実かどうか見分けが付けられない若年層がネットを利用するようになってきました。
「SNSで気になったものは、真偽を確かめずにとりあえず拡散する」というような軽い気持ちから、フェイクニュースがどんどん広まっていくようになってしまったのです。あまり意識していないという点も若年層がフェイクニュースを拡散してしまう要因だと言われています。ただ、若年層であってもフェイクニュースを見分ける力がある人もいます。
一番の問題は、中高年のネットリテラシーです。携帯電話の普及によりこれまでパソコンは触っていなかったものの携帯電話からネットを利用する中高年が増えていきました。40代後半から上の世代でももちろん見分ける力を持っている人はいますが、正義感の強い中高年がフェイクニュースを真実だと思い拡散してしまうケースも多く見られます。
年代によってはネットの普及や進化に追いつけず、とりあえずネットで流れていることは真実だと勘違いしてしまっている人も多いのです。これが、フェイクニュースにおけるもう一つの問題点だと考えられます。
フェイクニュースに騙されないためには?
SNSの一つ、Facebookでは多くのフェイクニュースが蔓延しているとして運営側も対策を行っています。しかし、フェイクニュースを防ぐということは一つひとつの情報を裏取りし、拡散される前に削除しなくてはならないということにもなるため非常に大変です。
そこでFacebookは、新聞広告にフェイクニュースに騙されない10個のポイントを掲載しました。
- 見出しは怪しくないか
- ソースはどこか
- URLには何が書かれているか
- フォーマットに違いはないか
- 日付は正しいか
- 写真は正しいか
- 執筆者は誰か
- 他にも同じ話題でニュースが出ているか
- ジョークではないか
- 最初は批判的に読み、信頼できるものだけを拡散する
この10個のポイントは、Facebookだけではなく他のSNSやネットに掲載されている情報全てに言えることです。フェイクニュースに踊らされてしまうという方はポイントを確認しながら、フェイクニュースを見分ける力を身に付けていきましょう。