「一億総活躍社会」という言葉を一度は耳にしたことがある方は多いでしょう。
この一億総活躍社会は、2015年10月から発足したアベノミクスの第2ステージとも言える施策となっています。施策の内容は、経済成長・子育て支援・安定した社会保障などの実現を目指しており、現在日本で問題となっている少子高齢化を食い止め、50年後の未来も日本の人口が1億人以上を維持し、誰でも活躍できるような社会とするために打ち立てられました。
一億総活躍社会は、今後定年退職を迎える人にどのような影響を及ぼしてしまうのでしょうか?今回は、一億総活躍社会と30~40代のうちに考えておきたい定年後の人生と併せてご紹介していきましょう。
定年後の人生設計は30~40代のうちから考えるべき?
現在、少子高齢化が進んでいる社会の中で、より長い期間1つの会社で働き続けることが必須となっています。従来のような働き方ができなくなっている時代に入ってきているのですが、高齢者雇用安定法改正での「継続雇用制度導入」「65歳以上への定年引き上げ制度」「定年制の廃止」のいずれかを企業に義務として課していても、未だ8割以上の企業が「60歳定年」としています。60歳定年以降、1年ごとに契約更新を行う企業もあるなど、60歳以上の高齢者に対しての扱いが改善されていないと言えるでしょう。
このことから、人材不足も叫ばれている現状ですが、定年を迎える60歳以上の人材は企業において活用が進んでいません。それどころか、人材不足から働き手を増やそうと外国人技能実習制度を開始することが決まっています。やる気もあり、若く優秀な外国人に、日本の高齢者は敵うでしょうか?
現在では、サービス業を中心に外国人労働者が増加しています。外国人は母国語だけでなく日本語を話すことができ、コンビニや飲食店などの複雑とも言えるオペレーションにも対応しています。定年を迎えるまでにそれなりの経験や実績、給料が下げられても文句を言わずに働けるのであれば、企業からも再雇用されることが考えられます。しかし、現在の給料よりも3~6割ほど低下してしまってはこれまで通りの生活を送れなくなってしまうことも考えられるでしょう。再雇用は、これまで以上に厳しい現状となってしまうため、30~40代からすでに定年後の人生についてを考えていた方が賢明と言えるのです。
50歳以上は人生のサバイバル期?
30~40代のうちから定年後のことを考えて、転職をした方が良いのではないかと転職を検討し始める人も多いのではないでしょうか?しかし、50歳以上ともなると転職が難しい現実があるのです。人生における第2のサバイバル期ともされている50歳以上は、大企業に勤めており、それなりの役職を与えられていても転職は厳しいでしょう。
それこそ、長年同じ企業に勤めていれば、「一生会社に面倒を見てもらえる」と考えてしまう人が少なくありません。社内では役職を与えられていても、退職してしまえば会社は助けてはくれないでしょう。
過去にその企業で功績を挙げていても、他の企業で通用することも考えにくいです。企業は、現場でバリバリと働いてくれる人材を欲しているので、転職した際に同じような待遇や役職に就ける可能性は低いことが考えられます。転職が難しいからと、アルバイトを選択する人もいますが、今後さらに日本では外国人労働者が増えていくことが考えられるため、アルバイトすら就きにくくなってしまうでしょう。
これを前述した一億総活躍社会と合わせて考えていきましょう。一億総活躍社会では、若者・高齢者・女性・男性・障害のある方・難病のある方・一度失敗を経験してしまっている方、誰でも活躍できる社会と言っています。これは、現状である人材不足を補うためのものとも考えられますが、高齢者も活躍できる社会とすることにより人材不足を補えるのでしょうか?
実際の企業では、高齢者の雇用を推進できていない現状があります。50歳以上の人は、管理職や役職を経験した人が多くなるため、現場仕事を敬遠したり、自分の実力を勘違いして周りに口出ししてしまったりする人も多くなりがちです。このことから、社内の空気自体も悪くなってしまうことが懸念され、企業としても雇用を踏み止まってしまうのでしょう。
高齢者も活躍できる社会を目指していますが、どのように目指していけるのか、企業の現状や雇用問題も合わせて取り組みを行わなければ、高齢者の雇用は増えていかないことが考えられます。このことを踏まえると、50歳以上は人生において第2のサバイバル期に突入したと言っても過言ではありません。50歳以上となる前に、サバイバル期をどう乗り越えるのかを検討しておくことが必要となるのです。
年金支給引き上げも懸念しなくてはならない
一億総活躍社会では、充実した社会保障も提唱していますが、実際のところ高齢者の労働環境が改善されることで、現在の年金支給年齢からさらに引き上げられるのではないかと懸念されています。高齢者もどんどん雇用されるようになれば、年金の支給を65歳にしなくても良くなると考えているのでしょうか?以前は当たり前だった定年退職後の悠々自適な年金生活が、この一億総活躍社会の実現により叶わなくなってしまうことが考えられます。年金支給開始年齢を現在の65歳よりも引き上げる際には、当然世論は反発するでしょう。
しかし、消費税引き上げも然り政府の決めた制度を適用されてしまえば、日本にいることで必ずそれが敢行されてしまうでしょう。消費税引き上げと同様に、年金支給年齢引き上げも徐々に段階を踏んで引き上げることが予測されます。年金支給年齢が引き上げとなってしまえば、より高齢者も働かなくてはならないことになるでしょう。一億総活躍社会では、社会保障の維持を図るために、現在の少子高齢化を何とか食い止めようとしています。そのための施策として、子育て支援の充実を掲げているのです。少子高齢化を食い止めても、一億総活躍社会によって高齢者の労働は必然となり、年金支給開始年齢も引き上げられてしまうでしょう。
今から考えておくべきこと
一億総活躍社会で高齢者の労働が推奨されていく中で、再雇用や転職、アルバイトをしなくてはいけないと考える人は多いですが、現実的には再雇用や転職、アルバイトも危うくなってきているのです。そこで、今の30~40代のうちから定年退職後の準備を進めておくことが必要となります。では、具体的にどのような準備を行えば良いのか疑問に思う人も多いでしょう。
ここからは、今から考えて準備しておくべきことをご紹介していきましょう。この準備では、社外の人間関係が最も重要とされています。現在企業に勤めている人は、社内での人間関係を築き上げていることと思います。
しかし、退職してからはその社内での人間関係もなくなってしまうと考えておきましょう。今行っている仕事とは関係ない人との交流を行うことで、より自分自身の価値を測れるきっかけとなるのです。価値を測るだけでなく、自身を客観視できることから自らの強みやアピールポイントも見えてきます。強みやアピールポイントを磨いておくことで、定年前に転職する、または起業する際にも役に立つでしょう。
一億総活躍社会の実現を目指してはいますが、その結果定年後も働かなくてはならない現実が待っています。一億総活躍社会は全ての人が社会で活躍できるようになる施策であると同時に、これから定年を迎える人にとっては厳しいものとなってくるでしょう。