「民営化」のウソとホントウ
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郵政民営化や水道民営化など、日本では様々な部分に民営化が採用されています。しかし、郵政民政化や水道民政化には、嘘がたくさんあるというのをご存知でしょうか?水道民営化については、水道事業を民営化しやすくする改正水道法も2018年12月に可決していますが、フランスやイギリスでの失敗例を軽視していると話題になっています。そこで今回は、民営化の嘘と本当のことについてまとめてみましょう。

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水道民営化の嘘と本当

水道民営化は、改正案が2018年7月に参院通過して11月に審議入りしたものでした。審議されるきっかけとなったのは2018年6月に大阪北部地震の影響です。このとき、水道の被害を受けた人々が多かったため、水道管の老朽化が指摘されるようになったのです。日本の浄水設備は1960年~70年代にかけて建設されており、今後も老朽化施設の更新需要が増加していくと言われています。しかし、早急に対処するには資金や人材の不足により困難です。
また、人口減少によって水道料金収入の減少が問題視されており、水道事業維持が困難になっているとも言われています。高齢化で人材も不足する中で、民間の力を取り入れて老朽化した水道管更新を行う必要があると判断されたのです。水道民営化については、自治体が水道事業の認可や施設の所有権を持ったまま民間企業に運営権を委託できるコンセッション方式が導入されました。

水道事業のコンセッションが実現できれば、起業の成長戦略と資産市場活性化に貢献すると言われています。しかし、規模の小さい自治体はコンセッション方式では解決にならないとする見方もあります。水道事業を困難にしている最大の原因は、人口減少による料金収入減少です。そのため、人口減少が目立つ自治体や規模の小さい自治体は、状況が変わらない可能性が高いのです。世界では、多くの国で民間企業が水道を運営していますが、日本では国営・市営・町営となっています。

現在、水道を運営する地方自治体は3割が赤字です。それらをすべて民営化してもコスト問題が解決するわけではありません。民営化によって水道料金の値上げやコスト削減における安全性の不安は、消費者に必ずやってくる問題ではないでしょうか?

過去には、国鉄からJRへとなった民営化では、赤字路線でも維持する方針となっていました。しかし、実際には2000年の鉄道事業法改正で赤字路線が廃止になっています。水道事業においても、採算が取れない過疎地の水道ではサービス低下する可能性があり、民営化で同じようなことが起こるのではないかと懸念する人々がいてもおかしくはないのです。政府によれば、水道事業の運営者決定は自治体で、値上げも所有者である自治体が決定するとしています。しかし、料金高騰に歯止めをかけているかのような説明は嘘と感じている方が多いでしょう。

海外での再公営化への動き

フランス・パリでは、水道が2010年に再公営化されています。民営化が始まって以降、パリでは水道料金が1985年~2008年までの間に174%増加しました。再公営化後には、利益が過少報告されていたとして、民営化が大きな原因になったことがわかっています。パリだけでなく、ニースでも2013年に再公営化しているほか、アメリカのアトランタ・インディアナポリスなどでも再公営化の事例があるのです。

特に、アメリカのアトランタでは企業の人員削減の影響で水の処理が行き届かなくなり、茶色の水が出るなど水質低下が見られています。老朽化放置による漏水や鉛が溶けて水道汚染事故が起こっている国もあります。民営化によって、水道事業者が利益を追いかけるようになるのは当然です。このように、海外では水道事業を民営化した後に様々な問題が生じて公営化に戻す再公営化の動きが目立っています。

実際に、2000年~2015年の期間で37ヶ国235都市で再公営化されているのです。水道事業を民営化したことで、水道料金の値上げを余儀なくされ、低所得者は水道の使用を禁止されるという事態になった所もあります。状況に耐えかねて住民による大規模なデモが起こった例もあります。

しかし、1度民営化にしたものを再公営化するのには膨大なコストがかかり、投資家の保護条項に抵触する可能性も高いです。海外では、譲渡契約途中で再公営化を行ったことで違約金も発生しています。日本でも自治体は民間企業と20年間の契約を結ぶとしており、不都合による途中解約となれば当然違約金が発生することになっています。こうして見ても、日本の水道民営化は海外の事例を避けて通ることはできないと言えるでしょう。

何でも民営化すれば良いというわけではない

生命が存続するために、空気と水は必要不可欠なものです。そのため老朽化した水道管の更新は急務であり、災害対策の一環としても重要な課題と言えるでしょう。しかし、水道料金値上げや安全面などを考えると、コンセッション方式による民間企業活用では問題があります。政府は、海外の再公営化の事例に関して、235例のうち3例のみ分析検討しただけで法改正案を可決したと言われています。また、政府は審議入りしてからわずか8時間の審議を経て可決しています。

消費者の負担や安全性を考えると、それではあまりにも軽視し過ぎていると言えるのではないでしょうか?政府によれば、民営企業は自治体よりもコスト削減のノウハウがあるとしています。そのため、民間企業を参入させれば競争原理によってさらなるコスト削減が期待でき、水道料金値上げを抑制できるとしています。

しかし、上記で述べたように営利を目的とした民間企業による水道事業は、当然利益を上げるための値上げやサービス低下という消費者の生活に直結する影響が大きいのです。水道民営化後には、料金高騰・水質悪化・過疎地などへのサービス低下など、どのような弊害をもたらしてもおかしくはありません。生活の格差を助長する可能性も高く、生活者の健康や命に関わる重大な問題となっているのです。少なくとも、政府は海外での事例を無視してはいけません。

海外では既に再公営化が主流となっている理由や水道民営化による影響についてをもう1度よく議論し直す必要があるのではないでしょうか?日本国民には十分周知されていないまま、水道改正法が衆議院本会議で可決されたのは、大きな問題です。コンセッション方式は、民間企業側にメリットしかありません。適正な料金・質の高いサービスを必ず守ると言っている厚生労働省を信用して良いものか不安に感じている方も多いでしょう。水道管の老朽化が進んでいる以上、現在のサービスを続けていくのは困難です。しかし、民営化にすれば解決するという訳ではありません。これまでの国内の民営化の事例見ても、課題や問題点が多く指摘されてきました。海外の事例を踏まえても、水道民営化・コンセッション方式は大きな問題だと言えるでしょう。

今回は、水道民営化の嘘と本当についてまとめてきました。郵政民営化を例に挙げると、法案の交付から施行までに2年かかっています。水道の老朽化が問題視され、それに対応する策を講じる必要があるにしても、民営化には問題点が多々あります。企業が水道事業を運営する場合、利益が優先になるのは明白です。サービスの低下や不安定な供給になれば、国民の生活はどのようになっていくのでしょうか?今後は、適正な料金と質の高いサービスを続けていくための具体的な策が提示されるのか注目しましょう。

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