2018年10月、経団連から就職・採用活動に大きく関わってくるルール「採用選考に関する指針」を2021年春に入社することが考えられる就職活動から廃止することを正式に決定・発表したことは、記憶に新しいのではないでしょうか?
これまで数十年前から就職活動は時代に合わせて変動してきましたが、今回のこの発表で2021年春までに就職活動を行う予定だった学生たちが混乱しないか心配に思う人も多いでしょう。
平成が生み出した「就活ルール」を根底から覆してしまうものになりかねないことが考えられ、これからの就活の在り方も変わっていく可能性があります。
では、平成の生んだ就活ルールとはどのようなものだったのでしょうか?そして、今後はどのような就活ルールとなっていくことが考えられるのかを見ていきましょう。
3月1日に就活解禁
3月1日となると、SNS上でも就活解禁が検索ワードの急上昇ランキングに躍り出るほど、注目を集めている就活ですが、さらにSNS以外でも多くのメディアがこぞって学生が就活する様子を取り上げていることが見受けられます。
就活が3月1日に解禁されるというのは、実は経団連が毎年時期を決定していることはご存知でしょうか?就活の日程については、以前から前倒しされたり後ろ倒しされたりとその時代や背景、または企業側の都合によって変動してきたことが考えられます。
今年は3月1日に就活が解禁しましたが、就活が解禁されても採用選考は6月からと決まっています。就活が解禁される日程と採用選考の日程は異なっており、それは2000年代後半頃からたびたび変化してきました。
そもそも、このような「就活ルール」は何のために作られたのでしょうか?企業としては、いち早く学生と会い、優秀な人材を確保しておきたいという考えを持っています。そのため、大手企業だけでなく各社がこぞって競うようになってしまえば、選考を早めてしまう可能性も考えられます。
そんなことを繰り返しているうちに、大学に入学したらすぐに就活を始めなくてはならないことにもなってしまうことが懸念されました。このことから、日本を代表するような大企業が集まっている経団連(以前は経済団体)が就活に関わるルールを設け、解禁日を決定するようになったのです。
これは、就職協定や倫理憲章、指針とされているものですが、司法で決定されているものではないため強制することはできません。強制することができないために、ルールを破ってしまう企業も出てきてしまい、就活ルールが済し崩しとなってしまうことも多くありました。
学生にとっても決められている就活ルールがなし崩しとなってしまうことで、学生の間でも多くの混乱を生んでしまう歴史を繰り返してきたのです。
しかし、一般的には就活解禁よりももっと前から水面下で就活は行われていることが考えられるため、ある程度の指針となるルールは必要だが意味を成していないのであれば、ルールを決定する意義がなくなってしまうのではないでしょうか?
平成の「就活ルール」とは
早すぎる就活となってしまうことで、大学生が学業に専念する機会を失ってしまうのではないかと大学側が批判を訴えたことが、2000年代の後半頃にありました。
この時、就活がどのようになっていたかというと「大学3年生の10月に会社説明会等の広報解禁となり、4年生の4月から先行解禁」としていました。
大学3年生の秋から就活が始まってしまうことで、学業が優先となるはずなのに就活優先となってしまう可能性があり、2013年卒業見込みの大学生から企業の広報のみを「10月解禁」ではなく、「12月解禁」としたのです。
その後安倍政権が発足し、さらに学業優先を要請した結果、2016年卒業見込みの大学生の就活からは「大学3年生の3月から広報解禁、4年生の8月から選考解禁」とされました。選考解禁が大きく後ろ倒しとなってしまったことで、予想以上の混乱を招いてしまい、その翌年からは選考解禁のみ現在の6月解禁とされたのです。このことから、平成の就活ルールは大きく変化し続けていたことが分かります。
そして、このような時代の流れから、以前は当たり前とされていた新卒一括採用を前提としている就活が見直されることとなったのです。以前は、新卒で就職することがステータスでもあり、より大手企業に勤められれば将来安泰だともされていのではないでしょうか?
しかし、現在では転職も一般的となってきたことや、働き方改革で働き方がより多様化していることから、既存の新卒一括採用が時代に適していないとされるようになってきました。
平成の生み出した就活ルールは、新しい時代に沿って変容する就活では「嘘」のようなものとなってしまうことが考えられます。このような就活ルールから、今後はどのような就活を行っていく必要があるのでしょうか?
今後の就活はどうなる?
冒頭にも前述しましたが、「採用選考に関する指針」を2021年春に入社するための就職活動から廃止することを正式に決定したことを経団連が正式に発表しました。
これまでの就活ルールがなくなってしまうことで、学生間でさらなる混乱が予想できますが、それと同時に新時代の就活も始まるのではないかということが考えられます。
平成で一般的だった経団連の就活ルールの形骸化も問題視されていましたが、これまでの一様化していた就活がなくなることで、これからの時代に最適な多様な就活が可能となるでしょう。
これまでの就活では、短い期間で将来を決める決断をしなくてはなりませんでした。これは、就活が長期化することを避ける目的もありましたが、広報解禁から3ヶ月ほどで選考解禁となってしまうため、学生にとっても企業にとっても、圧倒的に考える時間が少なかったことが考えられます。
しかし、今後は転職市場も活性化していることもあり、転職を前提とした就職やインターンでしっかりと自分のやりたい仕事を見極めたり、納得した上で就職したりすることができるようになるでしょう。
また、近年ではインターネットの普及から、企業の口コミ情報などのサイトも存在し、そのような口コミサイトを活用した企業情報を得られるようになりました。これまでは、広報解禁とともに企業からの情報を頼りにしていたり、不特定多数の人物が好きなように書き込める口コミ掲示板が多くありました。
しかし、今後はそのような企業中心の情報や悪質な口コミ情報ではなく、半実名で校閲機能を搭載した信頼性の高い口コミを探すことができるようになるでしょう。そして、都心部在住や高学歴であることなどを中心とした就活も変わります。
より住んでいる場所や学歴を問わないような就活となっていくことが考えられます。東京では多くの説明会や大企業が参加するような就活セミナー等が開催されています。しかし、東京で行われているために地方の学生にとっては不利益となってしまうことが多くなります。地方から都心部までの交通費から宿泊費、滞在費用等がたくさん必要となります。
このような広報解禁時点から、就活に地方と都心部で格差が生まれているのです。この格差をなくすために、分散化とも言える地方や学歴を問わない就活が台頭してくることが考えられます。
就活は、大学生にとって将来を決める一大決心となるものではなく、自由に決められる時代となっていくことが考えられています。時代の流れを汲み取り、従来の就活ルールを廃止することで不安となってしまう学生も多いでしょう。
しかし、前向きに考え、以前よりも自分のやりたい仕事、働きたい企業を見極められるように努めていきましょう。