不倫ドラマと聞くと、ドロドロしたストーリーをイメージする方が多いでしょう。
2019年7月10日からスタートしていた「偽造不倫」は、東村アキコ原作をドラマ化したものです。ドラマでは、女優の杏が主人公を務めており、こじらせ女子である「鐘子」を演じています。では、偽装不倫とはどのような作品なのでしょうか?
今回は、東村アキコが描いた偽装不倫について取り上げていきます。
偽装不倫ってどんなドラマなの?
32歳で独身・彼氏なしの主人公、鐘子が「結婚している」と嘘をついてしまったことから始まる偽装不倫は、一般的な不倫ドラマとは大きく異なる展開が待っています。
通常、不倫は既婚者が未婚だと嘘をついて始まるパターンが多いと感じる方もいるでしょう。まず、気になる偽装不倫のあらすじを紹介していきます。
32歳で独身の主人公「鐘子(しょうこ)」は、3年の婚活に疲れを感じていました。周囲からは、「パラサイトシングル」や「婚活疲れの派遣社員」などと呼ばれることも多く、徐々に自分はモテないと自己評価が低くなっていきます。
そんな時、1年間の派遣社員生活が終わる派遣契約終了のタイミングで、韓国に1人旅に行くことを決意します。
韓国での1人旅は、婚活を終わらせようと気持ちを切り替える目的でもありました。
そして、韓国へ向かう飛行機の中、鐘子に運命の出会いが訪れるのです。飛行機に乗り込むと、鐘子の隣席には25歳でカメラマンのイケメン、「ジョバンヒ」が座っていました。
そんな状況の中、離陸直前にジョバンヒの荷物が棚から落ち鐘子の頭部に直撃します。ジョバンヒはモデルのようなスタイルで、ケガをした鐘子に優しく接してくれましたが、鐘子自身はイケメンと関わっていることに気が動転し、咄嗟に既婚だと伝えてしまうのです。
ジョバンヒはケガをさせてしまったお詫びとして鐘子を食事に誘います。そして夜、ジョバンヒは「旅行の間だけでも僕と不倫しよう」と提案をしてきたのです。
モデルのようなイケメンのジョバンヒがなぜモテない自分との不倫を提案するのか困惑しながらも、期間限定の恋に魅力を感じてしまいます。忘れかけていた恋の楽しさを覚えた鐘子は、少しずつジョバンヒとの恋にハマっていくのです。
原作では旅行先が韓国として設定されていますが、ドラマでは福岡の設定となっています。また、原作では動揺した鐘子が咄嗟に既婚者だと嘘をついています。
しかし、ドラマでは既婚者の姉から借りたワンピースのポケットに入っていた指輪を眺めていたところに、男性の荷物が落下するという流れです。さらに、男性は韓国人のジョバンヒではなく、世界を巡るフリーカメラマンの伴野丈として設定されています。
このように、原作とドラマで多少のストーリーは異なるものの、不倫を偽るという最大の設定を基に繰り広げられていく展開は見物です。
伴野丈役は宮沢氷魚が演じており、鐘子の姉にあたる吉沢葉子役を仲間由紀恵、葉子の夫である吉沢健治役を谷原章介が務めているなど、配役も注目され話題となっています。
東村アキコは東京タラレバ娘も手掛けた漫画家
偽装不倫を描いたのは漫画家の東村アキコで、2017年11月よりWEB漫画配信サイトの「XOY」で連載がスタートしました。
しかし、XOYは2019年1月18日でサービスを修了しており、その後はLINEが運営するWEB漫画配信サイト「LINEマンガ」に移行し更新が続いています。
東村アキコは、1975年10月生まれで宮崎県串間市出身で、電信会社のOLを務める傍らに創作活動を行ってきました。デビューは1999年で、「ぶ~けデラックス」の増刊にて「フルーツこうもり」を描きました。その後、「きせかえサマー」や「きせかえユカちゃん」など様々な作品を手掛けています。
その後も、「海月姫」が講談社漫画賞少女部門受賞・テレビアニメ化・テレビドラマ化・実写映画化などの人気作となりました。2015年には「かくかくしかじか」で漫画大賞を受賞しており、数々の人気作を手掛けています。
ドラマ化した作品は、他に「主に泣いてます」や「東京タラレバ娘」などが有名です。WEB漫画配信サービスの縦スクロール漫画としては偽装不倫が初めての作品となっており、大きな話題を呼びました。
また、偽装不倫はコマ割り形式にして2018年11月に単行本化されました。2019年6月時点ではまだ連載は続いており、単行本は4巻まで発売されています。
東村アキコにとって、偽装不倫という作品はWEB配信サービスを活用した連載をはじめ、日本と韓国での同時連載やオールカラー長編など、初めての試みが詰まった作品となっています。東村アキコが描く作品は、主人公に彼女自身を投影しているものもあれば、現代の女性を題材にしたものなど、作品によって視点が大きく異なるほか、話の展開にスピード感があることも特徴です。
偽装不倫は、人気話題作となった東京タラレバ娘との共通点もあると言われています。例えば、東京タラレバ娘ではアラサーの独身女性の主人公の年下男性との恋愛を描いていますが、主人公の幻覚やこじらせた展開は偽装不倫と似ている所も感じられるでしょう。
嘘から始まるハラハラドキドキの展開が、今後どのように進んでいくのか気になっている方も多いのではないでしょうか?
主人公役の杏は鐘子をどう思っているのか
鐘子を演じている女優の杏は、以前から東村アキコの作品のファンだと述べており、偽装不倫でこじらせ女子を演じることに嬉しく感じていると言います。
ドラマでは、徐々に丈に嘘をついていることに対する悩みが深まっていき、既婚が嘘だと言うか迷っている段階に入ってきています。
鐘子は、未婚であることだけでなく、長く過ごしているうちに丈がどこまで本気で一緒にいてくれるのか深く悩むようになっていくでしょう。
杏は、本当の自分を隠してきたからこその悩みであり、現在の関係が崩れてしまうことが怖く感じている鐘子に対し、自分に正直になって欲しいと感じているようです。意図した嘘ではないにせよ、実際に気になる男性に既婚者と伝えて接することは簡単なことではないでしょう。
杏は、東村アキコから鐘子がハマり役だと伝え、こじらせ系女子を表現することが上手だとやりとりしたことも明かしています。実際に、杏もこじらせ系女子を演じたり自分が好きなものを追求したりすることが好きだと述べています。
偽装不倫は、現代の女性ならではの恋愛観や結婚観などを取り上げた作品であり、主人公の鐘子も現代の恋愛事情にぶつかり悩む女性の1人です。
東村アキコが手掛ける偽装不倫には、コメディタッチでもありながら、現代の女性たちが抱える恋愛事情や、本当の幸せが何かを考えさせてくれる作品と言えるでしょう。WEB漫画配信サイトや電子書籍など、作品の読者は漫画の選択肢の幅が広がってきています。
そんな中、初の試みでドラマ化を実現した東村アキコの偽装不倫は、今後も見どころが満載です。原作とドラマではストーリーに異なる点もたくさんありますが、嘘から始まる一風変わった不倫作品を見てみてはいかがでしょうか?
今回は、人気漫画家東村アキコの偽装不倫について取り上げてきました。不倫ドラマは、ドロドロとした展開が待ち受けていると考える方も多いですが、偽装不倫は嘘から始まる恋を描くハラハラドキドキの恋愛模様を描いた作品です。
「おひとりさま」として過ごしてした独身女性が、動揺してついてしまった嘘は、今後の展開をどのように動かしていくのでしょうか?