政府が廃案にした「検察庁法改正案」について、未だに事実が分からないという方もいるでしょう。中には、検察庁法改正案を初めて知ったという方も多く見られます。検察庁法改正案に関して、政治に関して発言してこなかった芸能人がSNSで続々と反対表明をしたことで話題になりました。
しかしなぜ検察庁法改正案に反対したのか、分からないという方も多いでしょう。また、検察庁法改正案とはどんな法案なのか分からない方もいるはずです。
そこで今回は、検察庁法改正案とはどのような法案なのか、問題点はどのような部分にあったのかなどをご紹介していきます。
Contents
検察庁法改正案とは?
検察庁法改正案とはどのようなものなのでしょうか?まずは、検察官の仕事内容と検察庁法改正案とはどのような法案なのかご紹介します。
・検察官の仕事
検察官は検事とも言われていて、強盗や殺人などの刑事事件において自ら事件の捜査に当たり、調査や検討を重ねて起訴・不起訴を決める仕事です。刑事裁判では、起訴に当たった証拠を提出したり裁判長に求刑を行ったりします。
その検察の行う事務を統括している行政組織を「検察庁」と言い、検察庁は国の組織です。検察庁では犯罪を捜査したり、罪を犯した人を裁判にかけたりしています。
検察官には役職があり、役職のトップと言われるのが「検事総長」で、その次に偉い人が「検事長」です。その検察庁の在り方について定められているのが検察庁法です。
・検察庁法改正案とはどのような法案なのか
検察庁法改正案とは、検察官の定年延長と役職延長の2つがあります。まず1つ目の定年延長は、検察官の定年を63歳から65歳に延ばすものです。一般の国家公務員の定年を60歳から65歳に引き上げる案が国会で議論されていますが、検察官も国家公務員の一種なので検察官も当てはまります。
人手不足も懸念されている点で、高齢者が労働力として活用が促進されることは何も問題はないでしょう。野党も定年延長に関しては、何の問題もなく認めようとしていました。
問題となったのは、2つ目の役職延長です。
次長検事や幹事長などの幹部に当たる人達は63歳になると、一旦幹部を辞めて役職の無い検事になり65歳まで働くという役職定年という仕組みがあります。役職定年は一般の民間企業などにも幅広く取り入れられているもので、人件費の削減や若手社員にも昇進のチャンスが渡るといった利点があります。この役職定年は国家公務員法によって普通の国家公務員にも2021年から適用されることが決まっているのです。
しかし今回は特例として「大臣など組織のトップが認めれば役職定年の延長ができる」というものがあります。この特例を検察庁法にも適用するのかが問題になっています。
特例の問題点とは?
なぜこの特例が検察庁法にも適用させることで問題になっているのでしょうか?ここでは、特例の問題点についてご紹介していきます。
・検察庁の人事を内閣が決めてしまうから
検察官は国家公務員ではあるものの、三権分立を守るために検察庁法という法律の元で行動しています。
三権分立とは行政・司法・立法がそれぞれ独立して監視し、国内の権力が集中しないためのものです。検察官の仕事は司法と強く結ばれているため、国家や内閣とは離れた組織であり、結果的に国家公務員と検察官は守らなければいけないルールが異なります。
しかし今回の特例では検察庁の人事も内閣が決めてしまうというところが、大きな問題点です。国家とは独立すべき関係にある検察庁の役職定年に対し、内閣が特例を認めた場合三権分立の原則が危ぶまれ、内閣の都合の良い人事を選ぶ可能性が出てくるのです。
・政権にとって都合の悪い案件を見過ごさせられるから
検察は様々な犯罪を暴いて追及する組織ですが、トップに当たる検事総長という地位は内閣と関わりのないものにしなくてはなりません。しかし内閣と関わりが深い人が検事総長を務めることになれば、政権にとって都合の悪い案件を見過ごせるのです。
三権分立の観点からしてみても検察の上層部の人事は政治が意見しない場所とされてきましたが、検察庁法改正によって政治介入の可能性が出てきてしまうため阻止する必要がありました。
・新型コロナウイルスで忙しい時に法改正案を通そうとした
今回の法案改正には、もう一つ問題点があります。それは、新型コロナウイルスで忙しい時に検察庁法改正案を通そうとした点です。新型コロナウイルスの影響を受けて、リモートワークや外出自粛など生活にたくさんの影響が出ています。
そんな中政府は肝心な対応が不十分であるにも関わらず、急いで成立させる必要のない法案を今無理やり可決させようとしていると国民の目に映ったのです。この無理やりな法改正に芸能人は怒り心頭し、SNSで抗議を起こしました。
その結果、特例規定について法案修正を検討し、検察庁法案改正案はいったん廃案となりました。
黒川前検事長と政府が起こした騒動
今回の検察庁法改正案の騒動で、黒川弘務前検事長が関係あるとして浮き彫りになりました。黒川前検事長と政府はどのようなかかかわりがあったのでしょうか?また、今回の騒動の影響からか黒川前検事長は検事長を辞任しています。
政府と黒川前検事長はどのような騒動を起こしたのでしょうか?最後は、黒川前検事長と政府が起こした問題についてご紹介します。
・定年延長問題
黒川弘務氏は東京高等検察庁の検事長で、法務省にも在籍していた過去を持つ安倍政権と関わりが深いとされる人物です。一部のマスコミからは「安倍官邸の番犬」と呼ばれています。
黒川前検事長は2020年の2月に63歳の誕生日を迎え退職するはずが、内閣は黒川前検事長の定年を8月末までに延長することにしました。現在の検事総長である稲田氏は今年の7月で退任する可能性が高く、その時まで黒田前検事長が退任していなければ次期の検事総長となる可能性が高かったのです。
また、森友学園問題や桜を見る会の疑惑などに、特捜部が乗り出すのを封じるための策略なのではないかと疑われています。しかし今回の改正法案の施工日は2022年4月1日からとなっているため、今回の騒動とは関係が無いと考えられます。
・賭け麻雀問題
黒川前検事長は、産経新聞社の次長と社員含め朝日新聞社の社員と一緒に賭け麻雀をやっていたとして、検事長を辞任しています。次長と記者は新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の中で東京都内の記者の家で朝日新聞社の社員と黒川前検事長、産経新聞社の次長と社員の4人で7回集まり、少なくとも4回賭け麻雀をしたそうです。
これを知った市民団体と岐阜県弁護士会は、常習賭博容疑で地検特捜部に告発状を同地検に提出しています。
なぜ法改正案は見送りになったのか?
なぜ法改正案は見送りになったのでしょうか?その一番の理由は、批判的な世論が集まったからと言えるでしょう。今回の法改正案は三権分立が政府の影響を大きく受けるとして、芸能人や検察のOBなどからたくさんの批判的な意見が集まりました。
それに加えて、新型コロナウイルスの第二次補正予算案があったためその案を最優先させたのでしょう。複数の法案を一本にした国家公務員法改正案は継続審議の手続きを行わずに、そのまま廃案となることが分かっています。
検察庁法改正案とはどのような法案なのか、問題点はどこにあったのかをご紹介してきました。検察庁法改正案は廃案となりましたが、一緒に考慮していた国家公務員の定年延長も改正案と共に流されてしまったことは国民にとっても遺憾でしょう。
本院の意思を無視して強制的に解雇する定年制は年齢差別と見なされていて、定年廃止が世界の流れになっています。日本は今やっと定年を延長する代わりに給与を減らすという改革を起こしていますが、世界と比べてみると時代遅れです。
世界の情勢を早く取り入れてこそ、日本の改革は進んでいると言えるのではないでしょうか?